ティントリップの不思議~唇が染まる原理とは~

2017年9月1日

近年流行りのティントリップ、なぜ落ちづらいのか気になったことはないでしょうか。ほかの色と何が違うのか。私もティント製品をいくつか手掛けましたが、その原理が理解しきれず常々気になっておりました。ここではみなさんが気になるティントの不思議を解説させていただきます。




ティントの意味

まずティントとはなんなのか。ティントは英語でTint、化粧品においては染めるという意味をもちます。では”染める”とはなんなのか。この”染める”を説明するために、化粧品に配合される有機合成色素のことからお話しさせていただきます。

化粧品の鮮やかさの根源は?

化粧品を鮮やかにするものこそが有機合成色素と呼ばれる色素たちです。有機合成色素以外にも無機顔料や天然色素など色に起因する化粧品成分はありますが、やはり化粧品の色付けの主役といえば有機合成色素となります。特に口紅などの鮮やかな化粧品に関しては有機合成色素抜きには艶やかさやかわいさを演出できません。

この有機合成色素は有機顔料染料に大別できますがこのうちの染料こそがティント製品のキモとなるべきものになります。

有機顔料と染料の違い

それでは有機顔料染料の違いを作用機序とともにご説明させていただきます。

有機顔料

有機顔料は基本的に水にも油にも溶けないという性質を持つため、ローラーなどで潰して、目で見えないサイズ(微粒子レベル)まで砕きます。そしてそれを分散させることで均一な色を作り出します。分かりやすく絵で表現すると以下のようになります。

有機顔料の肌での状態図

このように有機顔料は皮膚上に使用した化粧品に乗っているだけです。もちろん微粒子状態ですので皮膚の中に浸透することもありません。なので、皮膚に強く付着することはありますが、頑張って洗えば落とすのにそこまで苦労することはないと思います。

場合によってはマスカラのように付着力が強い場合は落ちづらくなることはありますが、これはそもそも色がついているマスカラのベースが落ちづらいだけであって、色自体が落ちづらいわけではありません。

染料

それでは染料の場合はどうでしょう。染料は有機顔料と異なり、水やエタノール、もしくは油に溶解する性質を持った色材です。溶解するということは皮膚内に浸透していくということです。

皮膚と言ってもせいぜい角質層(表皮の最外層)までですので安全性に問題があるというレベルではありません。こちらも絵に表してみました。いまいち分かりづらかったら申し訳ありません。

染料の肌での状態図

描いてみたはいいもののやはりだいぶ分かりづらいですね…。黒線が皮膚と化粧品の境目です。化粧品=ティントリップ、皮膚=唇なんかをイメージしていただくと理解しやすいかもしれません。染料が角質層中に浸透している様子を描いております。

このため、化粧品を洗い落としたところで角質層に浸透した染料は落ちなくなります。その結果、落ちづらい製品ができあがるわけです。

色を付けるという目的は同じでもそのための働き方は全く違うんです。すごく面白いですね。

ティント製品は危険?

肌にこんな鮮やかな色が浸透していると思うと少し怖いですね。しかし心配はいりません。染まっているといっても皮膚のごくごく浅い表面です。角質を落とすレベルでごしごし落とせばもちろん薄くなります(肌や唇への負担が大きくなります。)し、普通に生活していればターンオーバーにより通常数日で消えてなくなります。オイルクレンジングなどのクレンジング剤で吸い出すのが一番一般的でしょうか。

いずれにせよ浸透するからといって特に危険ではありません。他の化粧品も色がある部分が浸透しないだけで実際は一部染み込んでいるでしょうしね。

まとめとティントの豆知識

結論としてティントリップが染まる理由としては、「通常の口紅は色を乗せるだけ、ティントリップは色を浸透させるため」ということでした。

ちなみに全成分表示なんかを参考に買われている方にお知らせしておきますと、ティント効果のある色材である染料は赤223や赤218が有名です。そのため、これらの番号が表示されていたら染料が入っているなと思ってくださいね。

また、例えば赤223はテトラブロムフルオレセインという化学物質のことですが、水に触れると溶けて発色します。また、空気中との水分との反応でも発色します。そのため、ティントリップは使っているうちに唇や空気中の水分と反応し続けて、少しずつ色が変わっていく傾向があります。もちろん配合量によるところは大きいですが、買って数か月たって新しいものと比べたら全く色が違うということも起こりえます。ティントリップの面白いところですね。