化粧品開発者の仕事内容~輝かしいイメージとは裏腹に~

2017年8月29日

さて、やはり化粧品開発者としてブログを公開するからにはまずはその仕事内容から明かしていく必要があると思います。

そこで、記念すべき第1投稿では私が化粧品開発者としてどんな仕事をしており、その仕事の楽しさや辛さなどを、包み隠さずご紹介しようと思います

この記事は化粧品の研究開発職で就職をしようとしている方など、就活生にも是非参考にしていただきたいものとなっております。なかなか知ることができない化粧品開発職の裏側をご覧ください。




化粧品メーカーへの入社

私は大学院卒業後、某大手化粧品メーカーに入社し、化粧品配合原料の研究や、処方の開発を通してキャリアを積んできました。勤務の密度は濃く、周囲の意識も高かったことから必死に勉強して知識を蓄えました。もともと化粧品への興味から関連書籍を買ったりしており、おそらく消費者の皆さんが知らない専門的な知識もいろいろと持っているので、なるべく分かりやすく還元していこうと思います。

さて、少し私のホームページの紹介になってしまいましたが、今回のテーマについてお話ししましょう。

それでは実際の化粧品製造にあたり開発者が、ラボスケールで一体どんな仕事をしているのでしょうか。

化粧品開発者の仕事の表と裏

みなさんは化粧品開発という仕事にどのようなイメージを持たれているでしょうか。実験台に向かっていろいろな原料を混ぜ合わせて良い使用感が出るような化粧水を作る、色を組み合わせてきれいでかわいい口紅を作る、そんなイメージは決して間違ってはいません。しかし、そのような良い化粧品を作るためには数多くの苦労が隠されているのです。

化粧品開発の裏その1 ~山盛りのクリア項目~

化粧品を開発するにあたりいくつもの山が存在します。適当に原料を混ぜて作れるものではないのです。

安定性

まず大事なのは安定性となります。化粧品は基本的に3年間品質を維持することが求められます。3年というのは非常に長い時間で、1000日以上その品質を保たなければいけないということです。

品質を維持するために、例えば乳化物では分離(水と油が分かれること)しないように粘度を上げたりといった対策が必要となります。安定性が十分かを試験したくても、3年間置いておくわけにはいかないため、3年間過ぎるのと同様の経時変化が見られる条件で数週間から数か月置き、中身がどのように変化しているかを確認します。これを加速試験といいます。

高温地域や低温地域を含めて様々な使用場面を想定し、あらゆる状況で安定性を担保するために様々な温度やサイクルでインキュベートします。

最高の使用感の化粧品を作り上げたと思っても、半年間安定性を確認し続けて半年目に看過できない異常が生じたらそれは発売できませんし、改良したとしても再び長期の安定性の確認が必要となるのです。

非常にめんどうくさく、一喜一憂する作業となります。

安全性

次に安全性が重要事項となります。まず使用部位(皮膚、唇などの粘膜など)によって使える成分、使えない成分、配合制限成分、配合可能量などを厚生労働省が指定しており、ここで使える原料に制限がかかります。一般にポジティブリスト、ネガティブリストと呼ばれるものが該当します。

さらに通常はメーカーごとに数ある原料を見極め、本当に安全なのか?どれくらい配合できるのか?といったもろもろを決定します。

その上でできあがった中身をパッチテストなどの方法で試験し、世に出せる安全な化粧品なのかをチェックします。

どれだけすごい化粧品ができても安全性が担保されなければ世には出せません。

抗菌性

そして忘れてはいけないのは抗菌性です。化粧品を使っていて菌が発生・増殖し、腐るのを防ぐために防腐剤を入れるのが基本です。

防腐剤は多く入れればいいというわけではなく、入れすぎれば刺激となり安全性に支障をきたす場合もあります。そのため、安全性や使用感などほかの要素との兼ね合いもしつつ配合成分や原料を確定する必要があります。

抗菌剤として有名なのはパラベンですが、この原料も刺激が強いと言われています。パラベンの危険性に関しては最新のデータを示した記事がございますので良かったらご参照ください。

 

その他

さて、ここまで大きく3つの要素を上げましたが、この3つは基本中の基本です。実際の開発の場面ではこれらを満たしつつ、さらに多種多様の試験をクリアしなければなりません。

ここから先の試験については剤型(ローション、乳化物、口紅、粉物など)によって大きく変わってきます。例えばパウダーファンデーションであれば振動などに耐える強度を持ちつつも、柔らかくとれが良いものを目指します。

もちろんこれらの試験項目はメーカーにより基準が異なり、雑な試験をしている会社も中にはあると聞きます。

いずれにせよ、基本的には細かな試験全てに合格しなければいけません。一つクリアしたと思ったら別の試験がアウトで、そっちを改善したら合格だったものがダメになってた、なんてことは良くあることです。

化粧品開発の裏その2 ~試行錯誤の連続~

上記に示したクリアすべき数多くの試験、これをクリアするために無数にある原料の組み合わせや製法を試していきます。

当然使用感や求められる効果も期待に応えられるものでなくてはなりません。なかなかうまくいかないときは何十回も似たような化粧品を作ることになります。

作っては試験し、作っては試験しの繰り返しになることはままあります。安定性に懸念があるときは数か月ごとに作るわけにもいかないので、まとめていくつも作ってインキュベーターに放り込んだりもします。

ものによっては1つ作るのに半日~1日以上かかることもあり、時間との勝負でもあります。

こうして手間暇をかけてすべての項目をクリアし、満足できる使用感、色、効能になった、開発者の汗と涙の結晶が製品となってお店に並ぶのです。

化粧品開発の裏その3 ~中流としての上下関係~

ここでいう上下関係とは決して部下と上司の関係のことではありません。

製品開発の流れの中での上流、下流との関係性となってきます。

開発職というのは研究開発でひとくくりにされることが多く、研究は少しこの流れから外れているため、もくもくとやっているイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、開発は違います。開発職は社内の多くの部署と関わらなければならない仕事なのです。

開発の流れとしては企画が回ってきて、それに基づいて中身を作ります。ここで中身情報についてのやりとりなどで上流の企画関係の人との交流が生じます。ここでしっかり考えを共有しておかなければなりません。下手をするとイメージが共有ができてなかったために、頑張って作った自信作が一瞬で却下されることになりかねません。

さらに大事なのが下流に位置する、生産関係の部署です。化粧品を販売する際にそのための中身をラボでちびちび作るのは非常に効率が悪いため、当然工場で100キロや1トン単位で作ることになります。これが非常に難しいです。俗に言うスケールアップですね。

使っている原料の種類や量が同じでも、スケールが全く違うために製法や温度管理でラボと異なる点が多く発生し、それが中身にも影響します。そのため、工場と協力して工場における製法を確立する必要があります。

また、容器と中身の相性といった点も重要になります。

例えばチューブ容器でしたら口径によって化粧品の粘度を調整する必要もでてきます。これはゆるい中身で大きな口径ではひっくり返しただけで中身がでてしまうかもしれませんし、固い中身で小さな口径では強く押さないと出てこなかったりするためです。

また、マスカラのチップやパウダーファンデーションのスポンジなどは種類によって中身の使用感に大きく影響します。そのため、容器関連の部署とのやりとしをし、情報共有するというのは必須項目だと私は思っています。

このように化粧品開発では実験机に向かっての開発以外にも様々な部署とのわずらわしくも大切なコミュニケーションが発生します。もちろんパソコンに向かう時間も少なくありません。

化粧品開発は最高の仕事

上では化粧品開発者にはさまざまな困難があるということを述べました。ただ言ってしまえばどんな仕事についていても大なり小なり苦労はありますし、嫌なことはたくさんあるでしょう。

上であれだけ文句を言いましたが、やはりは化粧品の開発は最高の仕事だと思っています。

なぜなら化粧品で最も大事なのは中身であり、その中身を自分の手で作れるからです。

言うなれば、化粧品開発は化粧品メーカーの中枢であると思っています。

苦労すればするほど、完成し発売されたときの感動は大きくなります。

そしてそれが何十万個も販売され、世の中の女性たちの美しさに貢献します。

すごくわくわくしませんか?